皆さんは、ブラウザ戦争という言葉をご存知でしょうか?
インターネット黎明期から、ネットを利用している40代以上の方であれば、ご存知の方もいらっしゃるかもしれません。
現在では、ブラウザも多様化しており、必ずしも特定のブラウザが覇権を握っているとは言えない環境となっていますね。
例えば、パソコンでは、
- Google Chrome
- Firefox
- Safari
- Microsoft Edge
- Internet Explorer
などがあります。
マイナーなものも含めるともっとたくさんありますが、使われているブラウザの種類は限られており、これらでシェア争いが行われています。
ところが、スマートフォンやタブレットが登場すると、標準ブラウザの他に、アプリとしていくつかのブラウザが提供されている以外にも、Googleアプリ、Yahooアプリなど、特定のサービスアプリとしてブラウザ機能を持つものが出てきています。
こうなると最早、どのブラウザがとか覇権を争うことがなくなりつつあります。
厳密にいうと、ブラウザの種類が多様化しているのですが、基本システムは4〜5種類に限られています。
「CSS ベンダープレフィックス」
などで検索すると、数種類の設定でカバーされていることが分かります。
さて、前置きが長くなりましたが、その昔、インターネット黎明期には、ブラウザ市場のシェア争いが激しく行われた時代がありました。
今回は、その物語を史実を元に多少の脚色を入れてご紹介していきたいと思います。
目次
第1次ブラウザ戦争 その1
時は、1990年。
インターネットという言葉も普及し、一般ユーザーもダイヤルアップという電話回線でネットサーフィンを楽しむようになり始めるほんの少し前の時代です。
それまでは、文書管理が主な目的だったハイパーテキストを表示するためのツールとしてブラウザが存在していましたが、商用ベースで利用させることが増えてきたことによって、よりグラフィカルなページを表示出来るものが求められるようになりました。
そこで登場したのが、Netscape Communications社が発表した、Netscape Navigator(ネスケと呼ばれていました)が使いやすく無料で使えたこともあり、瞬く間にブラウザ界を席巻していきました。
時は流れ、1995年。
とある大きな事件が起こりました。
Windows95の発売です!
これにより、世界中の一般家庭にパソコンが、爆発的に普及していきました。
もちろん、企業の中にもパソコンが続々導入されていき、それに伴いインターネットへの接続も一気に進んでいったのです。
このWindows95には、Internet Explorer(このからすでにIEと呼ばれていました)というMicrosoft社が発表したブラウザが標準でインストールされていました。
ここから、NN対IEの壮絶な覇権争いが勃発することになっていくのでした。
第1次ブラウザ戦争 その2
ネスケとIEは、インターネット黎明期のブラウザ覇権(シェア率)を握るために、使い勝手や安全性を犠牲にし、独自のHTMLタグを実装したり、独自の操作を実装したりして、とにかくブラウザの機能がそれぞれの進化を遂げていきました。
この頃になると、ネスケはNetscape Communicatorと名前を変えて新バージョンがリリースされていました。
IEがWindows95と抱き合わせで提供されたため、徐々にシェアを伸ばしていきましたが、独占禁止法違反として訴訟に発展するという副作用も現れていました。
そんな覇権争いが続いて迎えた、1998年。
Windows98が発表され、IEのシェアはますます加速していきました。
この頃になってくると、企業や個人でWEBサイト(ホームページ)を公開するものが増えてきていました。
そうなってくると、ネスケでは表示が崩れるが、IEでは表示が崩れないということが多くなってきました。
また、Javascriptも少しずつ普及し始めた時代で、ネスケはJSの使い勝手も悪く、徐々にIEに押されるようになり、この第1次ブラウザ戦争は、IEの勝利で終焉を迎えることとなりました。
第2次ブラウザ戦争
2000年以降、ネスケが姿を消し、その代わりにIEの覇権に挑んできたのが、
- Firefox
- Opera
- Safari
- Google Chrome
でした。
この5つのブラウザは、熾烈な覇権争いを始め、混迷を極めていきました。
まるでチキチキマシーンのように、あるブラウザが飛び出すと、他が追従し、先頭を走っていたブラウザのアップデートで動作が重くなると、こぞって他のブラウザに乗り換えるということが繰り返されました。
また、この頃からセキュリティホールを突いたウイルスやスパイウェアなどが現れ始め、セキュリティ強化も注目されていきます。
巨大なMicrosoftが抱えるIEは、変化するスピードに対応が遅れ始めていきました。
対して、台頭してきた新興勢力のブラウザは、これまで無かったタブブラウジングなどの機能を引っ提げて、勢力を伸ばしつつあります。
中でもFirefoxは人気を集め、新興勢力の急先鋒をなっていきました。
その後を追っていたのが、Google社が開発したChromeでした。
しかし、セキュリティや機能を強化していったFirefoxは徐々にソフトとして動作が重たくなっていました。
そこでFirefoxの次に白羽の矢が立ったのが、当時は動作が軽くて評判だったGoogle Chromeです。
開発が遅れるIE、動作が重いfoxを尻目に、着実にシェアを伸ばしていきました。
2000年頃から始まった第2次ブラウザ戦争は、2012年を過ぎた頃にはGoogle Chromeがトップシェアを確保するまでに成長し、終焉を迎えることになりました。
第3次ブラウザ戦争
厳密には、第3次ブラウザ戦争というのは定義されていないが、Chromeが覇権を握ってから、それぞれのブラウザは大きく舵を切っていきました。
その背景には、セキュリティがますます重要になってきたこと、スマートフォンやタブレット端末など、パソコンだけではなく、様々なプラットフォームでインターネットに接続する機会が増えてきたことがあります。
Microsoft社は、IEからEdgeへと切り替え、Operaはスマートフォン向けに舵を切り、Firefoxはセキュリティ強化を努めていきました。
Chromeは少しずつ独自路線を走り始めていますが、他のブラウザの多くはChromium(クロミウム)というGoogle Chromeをベースにしたオープンソースを基本に構築されている現状を踏まえると、しばらくはChromeの覇権は続きそうです。
ブラウザ戦争で見えてきたこと
インターネット黎明期の覇権争いは熾烈を極めました。
これは、黎明期に覇権を握ることでその後の拡大するであろうシェアを比較的少ない労力で獲得することが出来ます。
事実、IEは賛否を抱えながらも、つい最近まで圧倒的なシェアを確保し続けていました。
これはまた別のお話ですが、インターネット黎明期には、ブラウザ戦争の裏で検索エンジンも熾烈な覇権争いが繰り広げられていました。
こちらもどこか機会があればお話ししたいと思います。
しばらくは、Chromeの牙城を崩すことは難しいでしょう。
今後はますますモバイル端末でのネットへのアクセスは増えていきます。
いつの日か、画期的なブラウジングアプリが登場するかもしれません。
その時、第4次ブラウザ戦争が勃発するとしたら、どんなブラウザが覇権を握るのでしょうか?
もしかすると、動画を見るためにはこのアプリ、ニュースを見るにはこのアプリ、というようにすでに始まっていますが、目的や用途によって細分化されたブラウザアプリが対等していくので、これまでのような大きなブラウザ戦争は起きないかもしれませんね。
今後は、動画閲覧アプリならこれ、ニュースアプリならこれ、というように局地的な内戦が至るところで繰り広げられるのではないでしょうか?
ブラウザに特化してインターネットの歴史を紐解いてみると、この先の展望もまた違った見方が出来ますね。